「炎のごとく」
パトリシア・ボズワース著
まずタイトルが好きです。
原題は「DIANE ARBUS : A BIOGRAPHY」
写真家ダイアン・アーバスの評伝として書かれた本なので当然と言えば当然です。
ではどうして邦題が好きなのか。
はじめに彼女がどういう人物だったのか紹介しようと思います。
アーバスは世界恐慌のなかでも裕福な暮らしを続けていけるほどの資産家の家に生まれます。
そして生涯、裕福で家柄の良い自分と周りの人達との距離を感じて生きる事に。
そんななか18才でフォトグラファーのアランと結婚し、写真をアランから教わります。
その後、彼女はファッション写真の仕事をしながら、社会のなかで奇異の目を向けられるフリークス達を撮影していきます。
多くの写真家がそのようなフリークス達を撮影しても関係を続けないなか、彼女は彼らと関わり続けたといいます。
いっときも目を逸らさなかったのか、それとも逸らせなかったのか。
それは分かりませんが彼女の写真を見ていると、被写体に自分が見つめられているのだと感じる事があります。
不思議な感覚です。
彼女の事を知れば知るほど、彼女の生き方が炎のようだったのだと思います。
そしてタイトルを「炎のように」ではなく、より強固な「炎のごとく」にした事。
翻訳と言語編成の妙としか言いようがありません。
翻訳に抵抗のある方も多いと思いますが、こういう魅力がそこかしこに隠れています。
今年は新しい読書の楽しみを味わってみては?
アオヤギ